2025/11/6

— ドアーズ紅茶と、やわらかい季節の香り —
少しずつ風が冷たくなってきて、
朝の空気に湿り気と静けさが混じるころ。
毎年楚々では、“秋のドリンク”がはじまります。
シーズナルドリンクのひとつめは、ドアーズ紅茶を使用したオーツミルクティー。
柔らかい香りと、深く静かな余韻。
カップを手に持つと、ほんのりとした温度が指先に残るような、
そんなやさしい一杯です。

ドアーズ(Dooars)は、インド北東部、アッサム地方のすぐ下に広がる地域の名前。
ヒマラヤ山脈のふもとに位置し、霧と湿度の多い土地で育つ茶葉は、
アッサムよりも渋みが少なく、穏やかで丸みのある味わいが特徴です。
「紅茶」と聞くと、ダージリンやアッサムのような華やかな香りを思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれどドアーズは、もう少し控えめで、土のようなあたたかさがあります。
まるで“紅茶とミルクの間”にいるような存在。
楚々では、ドアーズ紅茶の落ち着いたトーンを包み込むように抽出しています。

紅茶を煮出すというのは、少し昔の喫茶文化のようでもあり、
どこか懐かしい手仕事です。
高温でゆっくり煮出すことで、
茶葉の中にあるコクやほのかな苦み、自然な甘みが引き出されます。
その深みにさっぱりとしたオーツミルクを重ねると、乳製品とはまた違うやわらく香ばしい香が広がります。
湯気の向こうで少しずつ色づいていくオーツミルクが、
まるで季節が移り変わる時間の流れを表しているかのようです。
焦らず、見守るように、ひとつの温度をつくっていく。
そのゆるやかな工程が、このドリンクの中に息づいています。

オーツミルクは、燕麦(オーツ)をベースにした植物性のミルク。
牛乳よりも軽やかで、ほんのりと甘みがあり、紅茶との新しい相性を表現してくれる素材です。
楚々では以前から、カフェラテやチャイでも
「植物性ミルクが持つ個性」を大切にしてきました。
オーツミルクを使うことで、
ドアーズ紅茶のもつ丸み・香ばしさ・やわらかさがより引き立ちます。
また、紅茶そのものの味を邪魔せず、
後味にすっと抜ける透明感が残るのも魅力のひとつ。
乳製品を使わないことで、
からだにも軽く、飲み終わりがさっぱりとするような仕がりです。

ドアーズ紅茶のオーツミルクティーは、
派手さはないけれど、ゆっくりと深まっていく秋に似たドリンクです。
甘すぎず、渋すぎず、
日常の中でふっと一息つけるような静けさがある。
それはきっと、楚々という場所がいつも大切にしている
「季節の間(あわい)」を感じる感覚とつながっています。
日が傾く少し前、窓から入る光が金色に変わる時間。
そんなひとときに、この一杯を飲んでもらえたらと思います。