2025/9/26
中米に位置するホンジュラスは、カリブ海と太平洋に面した自然豊かな国です。国土の約80%が山岳地帯で、熱帯気候でありながらも高地には冷涼な風が吹き抜けます。古代マヤ文明の遺跡や多様な生態系を有し、コーヒー生産においてもその地理的特徴が大きな強みとなっています。
特に標高の高いエリアでは、昼夜の寒暖差が大きく、チェリーがじっくり熟すため、豊かな酸と甘みを持つ豆が育ちます。
コーヒーの味わいを語るうえで「標高」は欠かせない要素です。一般的に、標高が高いほど気温が低く、チェリーがゆっくり成熟するため、豆の密度が高くなり、酸や甘みが複雑に重なり合うと言われます。
一方で、標高が低めのエリアでは成長スピードが早く、酸は穏やかで口当たりが柔らかく、ナッツやチョコレートのような落ち着いた風味に仕上がることが多いです。
エル・モナルカ農園の環境
エル・モナルカ農園は 標高1,500〜1,950m に位置しています。
この標高差が、コーヒーに奥行きのある味わいを与えているのです。
1,900m近い区画からは、柑橘や青リンゴを思わせる明るい酸が生まれます。
一方で1,500m付近の区画では、キャラメルやナッツを思わせる丸みのある甘さが際立ちます。
イシドロ・ロドリゲスさんは、こうした区画ごとの特徴を丁寧にロースターへ伝え、豆のポテンシャルを最大限に引き出す努力をしています。
今回ご紹介するロットは中煎り。シトラスやグリーンアップルのような爽やかな酸がありつつ、後半にはハチミツやナッツのような甘さが寄り添います。標高の異なる複数の区画の豆をブレンドしているため、明るさと落ち着きが同居する複雑さが生まれています。冷めていくと、フローラルな余韻も感じられ、最後まで飽きさせません。
この豆のクリアな酸味と甘みは、フルーツを使った焼き菓子とよく合います。
例えば、楚々でご用意しているバナナパウンドや季節のマフィン。軽やかな果実味が重なり合い、口の中で自然に調和します。
一方で、チョコレートを使ったクッキーやブラウニーなど甘さのあるスイーツと合わせると、コーヒーの酸味が輪郭をつくり、後味がすっきりと引き締まります。
「選ぶことは、物語を届けること」──楚々では、このホンジュラスの一杯を、日々の暮らしに寄り添う特別な存在としてお届けします。
「標高差で味わいが変わる」という、コーヒーの奥深さを体験できること。
そして、生産者が自然と共生しながら土地の個性を引き出していること。
私たちは、ただ「美味しい」だけでなく、その背景やバリエーションの豊かさを伝えたいと考えています。
エル・モナルカの一杯は、まさにその象徴。楚々で過ごす時間の中で、遠いホンジュラスの丘を思い浮かべながら、味わいの旅を楽しんでいただけたら嬉しいです。