冬支度 チャイチョコラテ

2025/11/17

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チャイチョコラテ、冬のかたち

夏の季節に登場した「チャイチョコラテ」。
あの一杯を覚えてくださっている方も多いかもしれません。
夏は氷の透明感とともに、スパイスとカカオの余韻を楽しむ“静かな清涼”としてお届けしていました。

そしてこの冬、
同じ素材を使いながらもまったく異なる表情をもつ、
ホットの「チャイチョコラテ」が始まります。

温度が変わると、見えてくる世界

ホットにすることで、味の構造は驚くほど変わります。
冷たいチャイチョコラテではそれぞれの素材が独立していたのに対し、
温かさを加えることで、すべてがひとつに溶け合う。

スパイスの角がとけ、チョコレートの香りが丸みを帯び、
体の中心に静かに広がっていくような柔らかさが生まれます。

温度が上がることで初めて現れる香りの層。
その瞬間の開き方が、このドリンクの最大の魅力です。


名の響きと、素材のハーモニー

「チャイチョコラテ」という少し不思議な名前。
“チャイ”の持つ異国の香りと、
“チョコラテ”の甘やかでどこか懐かしい響き。

この二つを組み合わせることで、
スパイスとカカオという異なる温度がひとつのカップに共存します。

名前を口にするときの柔らかなリズム。
楚々では、そうした音の余韻も味の一部だと考えています。
言葉の丸みと香りの丸みが呼応するような一杯。


Chiyabaのチャイと、ヴァンヴリットのチョコレート

使用しているのは、夏と同じく中目黒「Chiyaba(チヤバ)」のチャイと、
Van Vliet Chocolate(ヴァンヴリット)のオーガニックチョコレート

Chiyabaのチャイは、ネパールの小さな茶畑で育った茶葉と、
スパイス、ミルクの香りが織りなす美しい透明感を持っています。
甘さよりも“奥行き”があり、体にすっと染み入るような質感。

そこにヴァンヴリットのチョコレートを合わせることで、
苦味の奥にやわらかな甘みが立ち上がり、
スパイスの余韻を包み込むような深みが生まれます。

まるで香りの対話のように、二つの素材が溶け合い、
カップの中でひとつの旋律を奏でます。


名を持つということ

「チャイチョコラテ」という名前は、
素材の組み合わせをそのまま並べただけのように見えて、
実はとても大切な意味を持っています。

“チャイ”のもつ文化的背景、
“チョコ”のもつ幸福感、
そしてバリスタの手により丁寧に抽出されるエスプレッソ(ラテ)。
言葉を並べるだけで、
一杯の中に異国と日常の距離感が生まれる。

言葉を変えずにそのまま残すことで、
お客様が「その響きごと味わう」ような時間をつくりたい。
それがこのネーミングに込めた思いです。


冬の楚々で飲む理由

楚々の冬は、光が低く、時間がゆっくりと流れます。
湯気が立ち上る瞬間に、空気が少しやわらぐ。
チャイチョコラテのホットは、
そんな冬の静けさに寄り添うドリンクです。

スパイスとカカオ、ミルクと甘み、
そしてカップの温度――
それぞれが穏やかに響き合いながら、
心の奥に残る“ぬくもりの輪郭”を描いてくれます。


名前の中にある遊び心

このドリンクを作るとき、
楚々のスタッフの間では、
「この響き、なんかいいよね」と自然に笑顔がこぼれました。

それぞれの日常と異国のあいだにある"ちょうど良い間"のような響き。それが、楚々という場所の空気とどこか似ている。

少し遊びがあって、少し詩的で、でもあたたかい。
そんな名前に惹かれてくださる方が、きっといると思っています。


ホットのチャイチョコラテは、
寒い日に体を温めるだけでなく、
季節の中にある静かな移ろいを味わうドリンクです。

夏とはまったく違う表情を見せる冬のチャイチョコラテ。
温度が変わると、素材の性格も変わり、
その変化こそが、飲みものが生きている証のように感じます。

どうぞ、ゆっくりとカップを手に取りながら、
冬の香りと水の流れる音を楽しんでみてください。

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